ブドウを使ったブランデーは、コニャック以外にも世界中に存在します。中でも高品質で、最近私もハマっているのはアルメニアのブランデーです。
アルメニアには「アララット(ARARAT)」「ノイ(NOY)」「プロシュヤン(Proshyan)」といった大きなブランドがありますが、その中でも有名で日本でも手に入り易いのはアララットでしょう。アルメニアブランデーに使われるブドウは原則としてアゼテニ、バナンツなど合計13種類が認められており、コニャックとはまた違う品種が使われていますが、アララットの蒸留方法はコニャックと同様の蒸留方式が取り入れられているのがまた面白い所です。その品質の高さ故、第二次世界大戦以前の一時期においては「コニャック」と名乗る事が許されていた時代もあったほどです。
アルメニアのブランデーは、19世紀末にロシアの実業家シュストフ氏が首都エレバンへの道を監視できるペルシャ城跡にあったブランデー蒸留所を買収した事から発展を遂げたと言われています。
アルメニアブランデーはロシアとイギリスとも深い関わりがあり、1945年のヤルタ会談でイギリスの首相チャーチルがスターリンから勧められたアララットのドゥヴィン(DVIN)というブランデーに深く感銘を受けた事も有名です。
アルメニアはかつて、ソ連に所属する国々へのブランデー供給を指定された主要生産国の一つでした。ソ連崩壊後はその流通が断たれ、アルメニアのブランデー市場は失われていた時期がありましたが、現在はかつての輝きを取り戻し、素晴らしいブランデーを送り出しています。
ノアの方舟が漂着したと言われるアララット山麓の神秘さと、激動の20世紀のコントラストに目を向けながらアルメニアブランデーを味わうのもまた一興かもしれません。