History in a glass No14
堀口切子
江戸切子は、江戸時代の後期、天保5年(1834)にガラス製品を商う加賀谷久兵衛によってガラスの表面に彫刻を模様したのが始まりと言われる。
明治時代には,当時最先端の技術を持ったイギリスからカット技士を招聘し、近代的な技法が確立され、発展していった。洗練された切子グラスになるのは、大正から昭和初期になってからである。
江戸切子の定義は、回転道具を用いた手作業で、江東区を中心とした関東一円で作られること。意外と自由である。切子の特徴でもある、カラフルな色被せ(いろきせ)は定義に含まれていない。しかしながら、青や赤などの装飾されたグラスが、一目見て分かる切子の醍醐味。この色被せとカット技術が江戸切子である。
先日、東京江戸川区にある江戸切子の工房「堀口切子」を訪ねた。3代続く老舗のガラスメーカーであり、江戸切子の日本の伝統工芸士でもある堀口氏に切子の魅力を教えて頂いた。
堀口氏は大学を卒業後、入社し修行を始め、2008年祖父の号である「秀石」を拝命、その後独立して「堀口切子」を興した。
堀口氏の作るグラスは美しい。Webでたまたま見かけた彼の作品を気に入り、サイトから購入してみた。シンプルでモダン、切子にありがちな華やか過ぎて不相応なデザインではなく、シャープに手作りされている。写真のグラスは黒被万華様切立盃(くろきせまんげようきったてはい)。グラスの中を覗き込むと万華鏡のように眺められる。
使い勝手もよく、手に持ちやすく、口元が薄くて飲みやすい。堀口氏曰く「美しさは使い手によって創られるもの」。この日本の匠をBARから世界に発信していければいいと思う。