History in a glass No15
ピュイフォルカ シャンパンタンブラー
この不思議な形の銀の容器を見て、シャンパンを飲む為の物だと想像する事が出来るであろうか。アールデコの直線的なライン、独創性、機能美を兼ね備えたフォルムを持つ。
現代銀器の最高峰、ピュイフォルカは1820年にパリで設立された。 フランスを代表する銀製品のブランドであり、エルメス傘下となった今でも、カトラリーや食器は大統領邸エリゼ宮でも使用されている。純銀スターリングシルバーのシャンパンタンブラーはチューリップ型をしていて口径が広く、香りと泡立ちが楽しめる造りになっている。実際にこのタンブラーの真ん中の底は窪んでおり、シャンパンを注ぐと、一筋の真っ直ぐな泡が立ち昇る構造になっている。その様子をいつまでも見てとれるのは、熱伝導率で冷たい状態を長くをキープできる銀器ならではだろう。シャンパングラスとは違い、白く曇ったグラス周りは水滴にもならない。
このタンブラーは知人から預かっていた物で、棚の奥にそっとしまっておいた。箱の中に布で包んで保管していたので、変色もなく、美しいままであったが、銀器は手入れをしながら、使用して味が出てくるもの。使う人の個性も反映される。骨董の和食器のように育てていく感覚だろうか。当然傷が付きやすいものなので、扱う際は細心の注意を払う必要がある。
銀器はグラスにはない重厚感と手触りを得ることができるが、普段使いするとそれなりの出費になる。よい銀器を見つけたら、長い時間をかけて付き合っていくのがいいだろう。