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フード・ペアリングの楽しみ方 vol.5「ペアリングの相手を見つけるための第一歩」

今回のペアリング

ペアリングの相手を見つけるための第一歩

「Lady Isla」
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「浜名湖産青のりとホワイトチョコレートのバター ピンクペッパーを忍ばせて」

暑さを乗り越えて、秋へと向かう虫の声が聞こえてくると、琥珀色のお酒をちびりちびりと飲みたくなる季節がやってまいります。

今回はウイスキーやブランデーをテーマにして、ペアリング相手の見つけ方を少しお話しさせていただきます。

ウイスキーやブランデーなどをストレートで嗜む時に、どういったおつまみを選んでいますか?多くの方は、手軽なナッツ類やチョコレートなどではないかと思います。

もちろんベーシックに考えれば合わないことはありません。でもペアリングという概念で考えていきますと、実際にチョコやナッツが万能なものでは無くなります。もしかしたら、最悪の組み合わせとなってしまうかもしれません。せっかくの豊かな味わいやふくよかさをなくしてしまったり、後味に苦味を感じさせてしまったりする事も多くあります。

では、どのようにしたら最適な相手を見つけることができるのでしょうか? それはまず、お酒の味わいと香りを読み取ることが重要となります。つまり、テイスティングの能力を高めることが必要となります。初心者の方には少し難しいことかもしれませんが、まずは自分自身が好きなお酒について、今までに体験したことのある味わいや身近な香りを使って書き留めてみてください。難しく考えずに、例えばアイラ島のラフロイグでしたら正露丸の味とか素直な感じでいいです。いくつか香りや味わいを分解することによって、その味わいや同じ香りが明確に見えてきたら、実際に食べ物などと合わせてみましょう。その相性の良さは、当然のことながらよくなります。これが、ペアリングの相手を見つけるための第一歩となるのです。

では、せっかくラフロイグがお題として出てきましたので、ラフロイグをテーマとしたペアリングを考えてみましょう。

ラフロイグ10年 = ヨードの香り、燻製、焚き火、……正露丸(笑)

プロになりますと、ラズベリーやイチゴ、オレンジ、ホワイトチョコレート、バニラ香などなど。このように、味わいや香りの細分化ができると思います。では、ペアリングとして考えたときにどの香味を協調させるのか? テイスティングをしたコメントをカテゴリー分けしてみましょう。スモーキーな部分をカテゴリー(A)、フルーツ系をカテゴリー(B)として考えてみてください。スモーキーな部分を活かすのであれば燻製物、フルーツ系を活かすのであればラズベリーやイチゴのジャムをのせたカナッペなどがよいでしょうか。これは「同調」をさせることによって、それぞれの味わいに輪郭をつけるための技法で、最も簡単なペアリングの見つけ方だと思います。

今回は、ペアリング技法の「補完」も加えて考えてみます。

カクテル名:「Lady Isla」

LAPHROAIG 10y: 30ml
Crème de Framboise:15ml
柿の葉茶: 20ml
技法: スローイング
グラス: アルマニャック・グラス

☆ペアリング素材

「浜名湖産青のりとホワイトチョコレートのバター ピンクペッパーを忍ばせて」

レシピ:10人分

無塩バター: 100g
乾燥のり: 50g(*1)
ホワイトチョコレート: 1g
海塩: 少量
オレンジの皮: 適量
ピンク・ペッパー: 10粒
クラッカー: 20枚

作り方:

  • 無塩バターを常温に戻して柔らかくしておく。
  • 乾燥のりをミキサーで粉砕する
  • ①と②を合わせて練った後、パラフィン紙で筒状に丸めて冷蔵庫で冷やし固める。
  • 冷やした青のりバター(③)にホワイトチョコレートを削ったものを乗せ、バーナーで炙る。
  • 海塩を適量散らす。
  • オレンジの皮をツイストさせて香りづけた後、ピンク・ペッパーを散りばめる。

(*1) 乾燥のりは、生のりをパラフィン紙に薄くぬって 100度以下の温度で乾燥させた直後のものが好ましい。

ポイント:

現行のLaphroaigが持つ香気成分と味わいに素材をプラスして、60〜70年代に感じたLaphroaigの味わいを再現します。優しいベリー系の味わいと、柿の葉茶の旨味が表現する経年し枯れた味わいが、現行ボトルの味わいに時間の経過を付加してくれます。そしてラフロイグが持つ海の香りとハーバルな香りを引き出すため、青のりの旨味を加えます。樽の香りは、炙って焦がしたホワイトチョコレートで。さらに酸味とスパイシーさを加えるためにピンク・ペッパーのアクセントを使い、脳を刺激させます。これらが、カクテルの味わいと向き合わせることを考えたペアリングです。

カクテルの中にあるポテンシャルを引き出しながら、ラフロイグのスパイシーな味わいを包みこみ余韻に変化させ、長期熟成されたラフロイグのまろやかでフルーティーな味わいを表現しています。

この記事を書いた人

井谷 匡伯
井谷 匡伯https://ameblo.jp/barnoage/
静岡県袋井市生まれ。地元で2000年にBAR NO'AGEを開店し、2007年に現在の静岡市へ移転。料理人を目指していた頃に培った、料理の技術とお酒に合わせて提供するスタイルを開店当初からベースとしている。様々な料飲専門書にローカル・カルチャーを基本としたカクテル・ペアリングを提案。現在も研究を推し進め、SNSを通じて様々な可能性を発信している。
井谷 匡伯
井谷 匡伯https://ameblo.jp/barnoage/
静岡県袋井市生まれ。地元で2000年にBAR NO'AGEを開店し、2007年に現在の静岡市へ移転。料理人を目指していた頃に培った、料理の技術とお酒に合わせて提供するスタイルを開店当初からベースとしている。様々な料飲専門書にローカル・カルチャーを基本としたカクテル・ペアリングを提案。現在も研究を推し進め、SNSを通じて様々な可能性を発信している。