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Still graffiti in America

Tasting Vocabulary 101

Grassy

“Grass Trimmer” (https://flic.kr/p/93D5ZZ) by sacks8 CC BY 2.0

夏をイメージさせる薫りの一つがこのGrassyだろう。日本語に訳せば「草っぽい薫り」。この表現に当てはまる匂いは色々あると思うが、一番イメージしやすく、かつ実際に多いのは”freshly cut grass”(刈ったばかりの草)とよばれる青臭さだ。

なんのことはない、芝刈りを連想すればいい。

でもここで、もうちょっと想像力を働かせてみよう。

刈られた芝はどんな状態だろうか?刈ったばかり?それともすでに乾燥が始まってしまっているだろうか?芝刈りを下のは蒸し暑い午後?それとも朝露に濡れる早朝だろうか?これらに対応するようなウィスキーの薫りはかならずあるはずだ。湿っぽさや埃っぽさ、熱っぽさというのもあるかもしれない。芝というよりむしろ敷きたての畳(い草)のようないかにも青々とした薫りもあるかもしれない。ウィスキーの薫りは単に個々の物体にあらず。より具体的な状況を想像するのもいいかもしれない。

High Gravity

Yeast Starter 2

“in the pressure canner” (https://flic.kr/p/9mhxwu) by Jenni Konrad CC BY-NC 2.0 with modifications

前回のStarter用濃縮麦汁の作り方を、もう少し詳しく紹介しよう。

用意するのは小型の12oz(350ml)のもの。Mason Jarは口のサイズがレギュラーとワイドの2つのタイプがあるが、ワイドで統一してしまった方が応用がきくはずだ。これにドライモルト1に水3~4の割合で入れてかき混ぜる。量は容器の一番上から指二本分ぐらいまで。これ以上加えると加熱時に吹きこぼれてしまう。内蓋・外蓋で封をしたら水を若干はった状態の圧力鍋に入れ、まず「おもり」をせずに5分ほど沸騰状態を保ち、麦汁が入った容器を十分加熱しよう。その後、おもりをして加圧状態に。おもりが回り始めて15分も熱すれば十分だ。火を止め、最低でも2〜3時間はそのままにしておこう。鍋が冷めてもJar自体は相当な熱を持っているからだ。

Jarが冷めたら鍋から取り出し、外蓋であるリングを外す。よく見ると内蓋の真ん中が少し凹んでいるはずだ。指で内蓋の外側を軽くこすって、しっかり封がされているなら出来上がり。これで最低でも数ヶ月は保存がきく。

時代の証人

Louis Pasteur

パスツールの人類に対する多大な貢献の原点は彼の醸造に向けられた好奇の目だった

ルイ・パスツールの免疫と予防接種に関する研究は、アーサー・フレミングの抗生物質の発見と並んで人類史上最も多くの命を救った偉業の一つだろう。彼がいなければ地球上に住む人々の数が60億を超えるなどということは決してなかったはずだ。

このように人類の幸福に輝かしい足跡を残したパスツールだが、その原点は彼の酒造りに関する研究だった。ワイン樽に残る酒石酸の研究業績で名をあげたパスツールは、当時ヨーロッパで爆発的に普及が進んでいた「てんさい糖」を用いた醸造で発生する酸敗に関する相談を受け、発酵そのものについての研究を始めることとなる。この頃はまだアルコールや乳酸の発酵は「糖の化学分解」の結果と考えられおり、酵母もそれらを手助けするための単なる無生物と認識されていた。しかし彼の研究によって発酵が微生物による生命活動の結果であることが明確になる。それに続くフラスコ実験による生物自然発生説の否定もさることながら、目には見えない無数の微小生物がこの世を埋め尽くしているという事実は、当時の人々の世界観を覆すパラダイム・シフトをもたらした。

今では当たり前の消毒という概念をジョセフ・リスターが思いついたのも、まさにこのパラダイム・シフトがあったからこそだった。そもそも微生物が病をもたらすという概念自体、それ以前はなかったのだから。もちろん醸造業にとっては、その恩恵はより直接的だった。特に1864年、パスツールがワインの酸敗防止に提案した低温殺菌処理法は瞬く間に広まり、世界の醸造酒の品質向上に多大な貢献をもたらしている。1869年に創業した日本初のビール醸造所であるSpring Valleyですら開業後程なくしてこの手法を採用していたという。その後、パスツールは「ワインに関する研究」(1866)、「ビールに関する研究」(1876)をそれぞれ出版し、衛生管理や科学的視点を醸造に導入し技術向上に大きな影響を与えている。

この記事を書いた人

ジミー山内
ジミー山内
ウイスキーアドバイザー。米カリフォルニア在住。アメリカン・ウィスキー及びクラフト・ビール関連業界に深く携わる一方、日本で気鋭のクラフト・ブルワリーであるTokyo Aleworksを創設。スコットランド在住時はScotch Malt Whisky Society本部で樽選定員として数多くのモルト・ウィスキーを世に送り出している。
ジミー山内
ジミー山内
ウイスキーアドバイザー。米カリフォルニア在住。アメリカン・ウィスキー及びクラフト・ビール関連業界に深く携わる一方、日本で気鋭のクラフト・ブルワリーであるTokyo Aleworksを創設。スコットランド在住時はScotch Malt Whisky Society本部で樽選定員として数多くのモルト・ウィスキーを世に送り出している。