History in a glass No12
ロブマイヤー ゴブレット
「光の彫刻」とも称される、ウィーンのクリスタルメーカー「LOBMAYR ロブマイヤー」。1823年から同族経営で成り立っており、現在は6代目を数える。
出発こそ小さなガラス店であったが、上質な製品を扱っていたため、人々の知るところとなり、ハプスブルク家から皇室御用達の称号を賜り、名声を確立した。
ロブマイヤーのグラスの特徴として、宙吹きの極薄、モスリン・グラスと呼ばれるカリクリスタル(鉛を含まない)がある。軽く、弾力性があり、透明で美しい。
初めて、ロブマイヤーを手にした時、あまりの軽さに驚いた。その繊細さからか、バーでロブマイヤーを使用している所はあまり多くないようだ。
写真の2脚のグラスは、左側がホフマンゴブレット。1910年に建築家ヨーゼフ・ホフマンがロブマイヤーの為にデザインした、マスターピースだ。フットの部分に厚みがあり、精密なハンドカットが施されている。右側がアンティークゴブレット。この製品はモノグラムがエナメル彩で厚く盛り上げられていて、全体にラスター彩(金属の粉末を吹き付けて焼き付ける)で色彩を出している。そのため、近くで見ると透明なのだが、離して見ると、パールや虹色の様なカラーが出てくる。曇って見えるのはそのためである。
ラスター彩は、かなり希少性が高い。ほとんどお目にかからない、ましてやロブマイヤーが作っていたという資料も少ない。1920年代に個人から依頼を受けて制作したものに、ラスター彩を施したと思われる。(ほぼイニシャルが入っている)。
以前、テレビで見たオーストリアの家庭風景の中の食器棚に大量のロブマイヤーが映っていた。日常的に使われているとは、あやかりたいものである。