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歴史はグラスに注がれる No5

History in a glass No5

ここに19世紀に作られた美しいフランスの工芸品がある。「オランダ景色」と名付けられたこの作品は、いまだに人々を魅了し続ける。

フランス北部ナンシー、鉄鋼業で栄えたこの街は、芸術性の高いアール・ヌーヴォーの街としても知られる。この地を代表する工芸家、エミール・ガレ。彼はナンシーで生まれ育ちガラス工芸の先駆者として名を馳せる。

さて、生まれこそ違うが、ナンシーで育ったドーム兄弟という職人がいる。

ガレとは違った作風でありながらも「エコール・ド・ナンシー」(ナンシー派)に属するまでになる。1889年のパリ博に出展、1897年ブリュッセル万博では金賞を受賞するなど、ガレに負けず劣らずの活躍を見せていくことになる。

アンテルカレールという立体的技法が彼らの特徴で、透明ガラスの層の上に色ガラスを挟み込み奥行きを出すという、特許まで取得した技法が彼らの真髄である。

写真のドームナンシー、残念ながら私の所有物ではなく、友人から拝借した。

リキュールグラス、水差し、ソルト入れ、それからカップ&ソーサー。

息を飲むほど華麗である。このような一流品を揃えるバーにしたいと常々思うが、なかなか難しい。

まずは高価であるという事、繊細故に破損しやすい、「用の美」と言うがこの作品は観ているだけで作り手の心に触れられる。等々。

小さなリキュールグラスは驚くほど軽く、逆さにするとドームナンシーのサインが透けて見える。

誰もいなくなった閉店後のバーカウンターで一人、このグラスを傾ける日が来るのだろうか。

この記事を書いた人

鈴木 裕介
鈴木 裕介https://blogs.yahoo.co.jp/bar_salvador2005
1975年宮城県生まれ。都内ワインバー、ウイスキーバー店長を経て2005年より東京・ 高田馬場「Bar salvador」オーナーバーテンダー。ウイスキーに興味を持ち、各地の蒸留所を巡るかたわら、骨董店にてヨーロッパアンティークグラスを集める。HOYAクリスタ ルの蒐集家でもある。
鈴木 裕介
鈴木 裕介https://blogs.yahoo.co.jp/bar_salvador2005
1975年宮城県生まれ。都内ワインバー、ウイスキーバー店長を経て2005年より東京・ 高田馬場「Bar salvador」オーナーバーテンダー。ウイスキーに興味を持ち、各地の蒸留所を巡るかたわら、骨董店にてヨーロッパアンティークグラスを集める。HOYAクリスタ ルの蒐集家でもある。