History in a glass No2
Val saint lambert ヴァルサンランヴェール
数年ほど前に都内で開催されていた骨董市をふらっと覘いてみた。
主に和食器や着物、古びた家具などを取り揃えており、バーにとってあまり掘り出し物が多い市とも思えず、帰ろうと思った矢先、一軒のお店でガラスの器に混ざって無骨なカットの背の低いカクテルグラスを見つけた。
店主に断って手に取らせてもらい、全体を眺めてからフォルムを鑑賞し、縁に手を滑らせて、さりげなくヒビの有無をチェックした。
バカラのアンティークグラスであるかと推測はするものの、断言はできない。店主に銘柄を聞くことにつまらない矜持が邪魔をして、「何処の国のものですか?」とはぐらかし尋ねてみると、「ベルギーのヴァルサンランヴェール」。と女主人は教えてくれた。全く知らないブランドであった。
聞けば日本での知名度こそ低いものの、ヨーロッパではバカラ、ラリック、サンルイに並ぶ老舗のクリスタルメーカーであるという。
せっかくの出会いである、購入を即決した。
お店に持っていき改めて眺めてみるとアンティークグラスならではの、100年以上の時を経た物だけが持つ、独特の存在感がある。
ステムに装飾が施され、フットには六角形のカットがされており、現代のグラスでは生産されていないスタイル。すぐにこのグラスに夢中になり、その後いくつかのアンティークのヴァルサンランヴェールを入手した。
使い勝手がよく、スタンダードカクテルやフレッシュフルーツのカクテルを作る際には頻繁に使用している。