2016年6月1日から日本国内でもアメリカン・シングルモルト「ウエストランド」の販売が開始された。シアトルのウエストランド蒸留所は、シングルモルトウイスキーのみを製造する、アメリカでは数少ない蒸留所のひとつ。
現在アメリカで主流のウイスキーといえば、バーボンウイスキーを筆頭に、ライウイスキーやコーンウイスキーなどが挙げられる。いずれのウイスキーも主原料は穀物だ。クラフトディスティラリーブームの後押しもあり、今日のアメリカ国内の蒸留所の数は大小合わせて500を下らない。その中でモルトウイスキーのみをつくっている蒸留所は、わずか3か所である。大麦麦芽のみを原料にしたアメリカン・モルトウイスキーは、まだまだマイナーな存在だ。
シアトルはモルトウイスキーの製造には適した土地だと、製造責任者のマット・ホフマンさんは話す。確かにシアトルは雨が多くて多湿、そして年間の温度差が少なくスコットランドの気候に似ている。またワシントン州ではピートが採掘でき、大陸北西岸の固有品種であるギャリアナ・オークから樽をつくっているという。ピートや樽の材質まで、地元産にこだわったウイスキーづくりが可能なエリアなのだ。
ウエストランドのモルトウイスキーは、スコッチのコピーではないとホフマンさんは強調する。もっとも大きな違いは、麦芽に対するこだわりだという。スコッチでは伝統的に焙煎をしていないペールモルトを原料にするのが通常だが、ウエストランドでは本来ビール用の焙煎した麦芽も使用している。麦芽の種類を増やすことで、風味のバリエーションも増やせるという考えからだ。
なお風味の多様性を追究するという点において、「スコッチは、ちょっと樽の種類に頼りすぎているかもしれない」とホフマンさんは指摘する。また酵母においても収率よりも味わいに着目し、ベルギービール用の酵母にこだわっているのも興味深い。
独自のビジョンを持ったウエストランドは、今後も要チェックだ。