運営:酒育の会


Warning: getimagesize(https://liqul.com/upimg/2019/08/logo170.png): failed to open stream: HTTP request failed! HTTP/1.1 429 Too Many Requests in /home/shuiku2017/liqul.com/public_html/wp-content/plugins/td-cloud-library/shortcodes/header/tdb_header_logo.php on line 611

LIQULはより良いお酒ライフをサポートする団体「酒育の会」のWEBメディアです

  • コラム
  • リカルライター紹介

Tasting Vocabulary 101:Lea&Perrins ~ウスターソースとウイスキーの共通点~

ウィスキーとウスターソースの共通点と言われても、頑張ったところで「色味」がようやく思い浮かぶといったところだろうか。

そもそもウスターソースと言われても、「オタフクソースとは風味が違うよなぁ」程度はわかるかもしれないが、中濃ソースやとんかつソースとの違いがさっと出てくる人はあまりいないかもしれない。実はこれらの違いはJAS規格で厳密に定められている。

日本でいわゆる「ソース」と呼ばれるものはJASでは「ウスターソース類」というカテゴリーでまとめられ、各ソースの粘度の違いによってさらに「ウスターソース」「中濃ソース」「濃厚ソース」に分けられている。中濃・濃厚という区分からもわかるように、粘度が一番低いのはウスターソースだ。

関西よりも東側に住む人々にとっては、中濃や濃厚ソースのひとつのとんかつソースと比べると、さらっとしたウスターソースはあまり馴染みがないかもしれない。逆に関西より西はウスターソースの方が一般的のようだけど、広島名物おたふくソースのように、総じて言えば日本ではドロッとした濃厚ソースの方が好みなのかもしれない。

ウスターソースの起源

ウスターソースの生まれ故郷は英国。英国ではウスターソースは正確にはウスターシャーソースWorcestershire Sauceと呼ばれている。

Worcestershireとは英国イングランド中部にある地域の一つ。「シャー(shire)」はよく「州」と訳されるから、Worcestershire Sauceは「ウスター州のソース」という意味。州都であるウスターWorcesterで初めて作られたことから、日本のようにウスターソースとも呼ばれることがあるが、どちらかというとウスターシャーソースという呼び名のほうが一般的だ。

このようにイングランド発祥のウスターシャーソースだが、本当の起源は実はインドにある。19世紀前半、州都ウスターのダウンタウンで薬局を営んでいた二人の薬剤師、John W. LeaとWilliam Perrinsが、ある人物からインドから持ち帰ったスパイスミックスのレシピを基に本場さながらのカレー粉を作って欲しいと持ちかけられたことに端を発している。そう、これが現在ウスターシャーソースの代名詞として有名なLea&Perrinsの始まりだ。

Lea&Perrinsのラベルには『この地方に住むとある高貴な人物のレシピより』と書かれているが、これが誰であるかの記述はない。日英両方のWikipediaではマーカス・サンディ卿がその人物だとの説明がなされているが、これは誤りの可能性が高いようだ。

古い文献を調べると、確かに「サンディ卿」が「高貴な人物」だったのは間違いないようだが、それはマーカス・サンディ卿ではなく、その親族のアーサー・ウィリアム・サンディ卿のこと。しかも、依頼したのは彼本人ではなくその夫人だったらしい。当時インドの首席判事を務めた人物が持ち帰ったカレーパウダーのレシピを再現してみたいと願ったサンディ婦人が、知り合いの女流作家にその話をしたところ、彼女の人脈に腕のたつ薬剤師がいるので、彼らに調合を依頼するのはどうだろうかという話になった。

そう、その薬剤師というのがLeaとPerrinsだったわけだ。

本物のウスターソースのフレーバー

なかなかややこしい話だが、この話からわかるように、当初LeeとPerrinsが取り組んだのはソースづくりではなく、なんとインド由来の香辛料の調合だった。

二人が試行錯誤しながらスパイスを調合する過程で、出来たスパイスを魚醤に漬け込んでアクセントを加えるというアイディアが生まれる。これが今あるウスターシャーソースの原型だ。

しかし、こうして出来た魚醤はあまりに刺激的で使用に耐えられるものではなく、持て余した二人はその魚醤を樽に詰めたまま地下に保管してしまう。ありがちな話だが、数年後興味本位で味見をした二人は熟成が進んだ魚醤が、よりマイルドで深い味わいを持つことに驚き、急いでこれを商品化したのだった。

ということで、本物のウスターシャーソースは実は日本人が慣れ親しむウスターソースよりも遥かに刺激的。モルト・ビネガーをベースに、アンチョビ由来の魚醤とインド・スパイスが織りなす薫りと味わいは、ちょっと日本人にはきつすぎるかもしれない。言うまでもなくこんなに刺激的で塩味の効いたLea&Perrinsのフレーバーそのものがウィスキーをそっくりそのまま表現するわけではないが、魚醤や各種フルーツ、様々なスパイスが生み出す薫りや味わいはとてもわかりやすく、かつ重層的。特に熟成感のあるウィスキーが醸す複雑かつ伸びのあるフレーバーをざっくりと表現するのに使えるし、ソースが持つ個々のフレーバーを対応させてもいい。

なにより、本国英国の人々と共通のフレーバー表現をシェアできる素晴らしい食材といえる。「本物のウスターシャーソース」であるLea&Perrinsは日本でも比較的簡単に手に入るはずだから、ぜひ一度試してみるといい。

この記事を書いた人

ジミー山内
ジミー山内
ウイスキーアドバイザー。米カリフォルニア在住。アメリカン・ウィスキー及びクラフト・ビール関連業界に深く携わる一方、日本で気鋭のクラフト・ブルワリーであるTokyo Aleworksを創設。スコットランド在住時はScotch Malt Whisky Society本部で樽選定員として数多くのモルト・ウィスキーを世に送り出している。
ジミー山内
ジミー山内
ウイスキーアドバイザー。米カリフォルニア在住。アメリカン・ウィスキー及びクラフト・ビール関連業界に深く携わる一方、日本で気鋭のクラフト・ブルワリーであるTokyo Aleworksを創設。スコットランド在住時はScotch Malt Whisky Society本部で樽選定員として数多くのモルト・ウィスキーを世に送り出している。