もう少しで春というこの時期に、友人のジョニーから「突然だけど、来週の水曜日にグレンコーに登らないか?」と連絡があった。仕事と遊び? で家を空ける事が多かったこの時期、その意図はと尋ねると「新しく発売するウィスキーの宣伝を兼ねて、山の天辺で40年物の栓を切り皆で乾杯しよう!」というものだった。参加者はアーサーとデーヴの計4人。本来新鋭の写真家が参加するはずだったらしいが、突然のキャンセルで僕に話が回ってきたのだ。「タツヤなら人畜無害でキャンプからもさほど遠くないし、そして時間に融通が利くだろう」というのが、僕が呼ばれた理由だと勝手に分析した。もしそうならそれは全て間違いである。人によっては僕の事を有害と思う人もいるだろうし、地図で見るよりグレンコーは遠く、最後に僕はジョニーが思うほど時間に融通が利く人間ではないのだ。それでもシフトを何とか調整して「Yes, I’m coming」と連絡を入れた。
僕は火曜日の夕方から車を走らせ待ち合わせのロッジに到着したが、他の3人はまだ着いていない。部屋にリュックサックを置きに行く時間を惜しんで、早速バーでパイントを注文した。2口目を飲み終えたあたりで「居たぞ~、もう来ているよ~」皆リュックサックを背負ったままバーに入ってきた。久しぶりに会う顔ぶれである。今夜は前夜祭かな? ……と思ったが、宴はビール2パイント・ウィスキー3杯と静粛なものだった。
それとは反対に次の日の登頂は想像をはるかに超えるものだった。風は真横から水平に吹き付け、体感温度はマイナス15度にも及んだ。僕は何でこんな事を承知してしまったのだろう? ……マウンテンガイドがいなかったら確実に遭難するコンディションだった。
何とか登頂に成功した僕らはすぐさまボトルの栓を切り、皆のグラスになみなみ40年物を注ぎ、写真を撮り終えると足早に下山準備に入った。この間、わずか3分ほどである‼
今回は雪ニモマケズ、吹雪ニモマケズでした。