今月は簡単にできる実験を交えて、酒の甘味について体験していきましょう。
「俺は甘いものなんて食べねーぜ!」とよく男性から聞くことがあります。しかしながら母親の胎内にある羊水中に甘味溶液を流すと赤ちゃんが嚥下したり、乳児の口に甘味溶液を垂らすと笑ったりと甘味は本来、先天的に好きな味なのです。
男性の甘味嫌いの理由
では男性の甘味嫌いの傾向はなぜなのでしょうか?
人間は成長していく中で食のライフステージにも性差があり、男性は筋肉を蓄えるため「タンパク質を含む高カロリー食」、女性は脂肪蓄積のため「デンプン系(例:糖質による甘味)や高脂肪系(例:油脂を使った甘味デザート類)の高カロリー食」を思春期に繰り返し摂取します。
またその時代の流行りの食文化があるため、本能とは全く別に、流行っているから食べる・食べないという「脱味覚的嗜好」という摂食行動があります。これにより昭和文化のドライ嗜好・激動の時代の男らしさ……等々の影響を大いに受けた男性は甘味を感じると避けるようになってしまうのかもしれません。現代では男女平等・LGBTなど理解から〇〇らしさを示す“性的な味!?”というようなものは減り、むしろ低炭水化物ダイエット・生活習慣病などの糖質忌避による甘味摂取低下が苛まれるかもしれません。
お酒に含まれる「甘味物質」の確認方法?
さて、お酒でドライな味といえば種々の蒸留酒、苦味のビール、辛口の日本酒……等々あるかと思います。これらには、実は甘味がかなり含まれています。香気成分ではなく「甘味物質」が含まれています。
これを確かめるためにギムネマ・シルベルタ茶を使って実験してみましょう。
方法は簡単です。ギムネマ茶を推奨量の水の1/3~1/2の水で濃い目に煮出し、それをひとくち(苦いです)口に入れます。30秒ほど口の中をまんべんなく、特に味蕾の多く存在する舌先・舌横・舌奥にあたるようにコーティングします。さあ、砂糖を舐めてみましょう。できればよく噛んで。この感覚は「砂を噛むようだ……」とよく言われますが、砂糖の「砂」はこれか! と感じる程に無味で、むしろ食感に意識が集中し不快に感じられます。
さあ、この「ギムネマ舌」でお好きな酒を飲んでみましょう。
ウオッカやウイスキーなどの蒸留酒に感じる上品なほのかな甘味は消え、苦味や刺激が全面に! ビールは尖った苦味と意外にも酸っぱい! 日本酒はわずかにうま味はありますが超辛口……ついでにコーヒー・薬草系リキュールは……やってみてのお楽しみ。あらゆる食品で試すのも良い経験でしょう。
酒類の甘味の正体は
ギムネマ茶は甘味を感じる受容体を埋め込んでしまう「ギムネマ酸」というものが含まれており、あらゆる甘味を感じなくさせます。特殊な甘味アミノ酸や人工甘味料なども例外ではありません。また、ヒトが甘味と感じない低濃度の甘味物質は他の呈味をマスキングし、カドを取る役目などをしています。
肝心の酒類の甘味の正体は、蒸留酒で言えばエタノールをはじめグリコール類・グリセロール、熟成する樽由来のキシロースやアラビノース、ビールは残糖等、日本酒はブドウ糖や甘味アミノ酸などがマスキングされてしまいます。ここから何が見いだせるかといえば、「甘味に隠された隠し味」を感じることができるのです。つまり、酒の味を分解して考えることができるのです。
カルーアがどのぐらい苦いかわかりますか?そしてどのくらい甘味物質に支配されているかを体験できるのはこの方法が手っ取り早いでしょう。甘味嫌いの人でも、いつの間にか甘い蜜に騙されているかもしれませんね。