ずっと疑問に思っていたことを書きたいと思う。
昨今、世界中でクラフトジンブームが沸き起こっている。
日本も例に漏れず、たくさんのクラフトジンのブランドが誕生。
ジンの主原料といえばジュニパーベリー、いわゆるネズの木から実る球果だ。
これだけジンがブームなのだから、ジュニパーベリー農家っているのだろうか?
ジュニパーベリーの農場なんか見たことがない?
数年前から疑問に思っていた。
幸いにも私は海外に呼ばれるケースが多いので、行った先でタイミングが合えば「ジュニパーベリーの農場知っていたら連れていって欲しい」と、お願いすることがある。
ただ、ヨーロッパへ赴いた先々のバーテンダーは皆、異口同音で「ジュニパーベリーの農場なんか見たことがない」と言う。
昨年、イタリアはフィレンツェのBarでのイベントにて。タンカレーNo.10のジュニパーベリーはトスカーナ産ということで、フィレンツェのバーテンダーに連れていって欲しいと懇願したところ、「わからない」との回答。
スロバキアBar showで伺った際も、時間を作り様々な蒸留所を巡ったが、スロバキアには『ボロビチカ』というジュニパーベリーのスピリッツが伝統的にあるにもかかわらず、ジュニパーベリーは海外産を使うとのこと。
アメリカでもネズの木はあるが、私が色々な所に尋ねた限りは基本的にヨーロッパ産のジュニパーベリーを使っているという事実。
ジュニパーベリーは商業的生産地はどこ?
じゃあ、いったいヨーロッパのどこでジュニパーベリーは商業的に生産され、それが世界中に散らばっているのか?
答えはバルカン半島の国々。
これは日本のジンも同様だ。
日本のジンに使われているジュニパーベリーは、輸入している代理店が数社あるのだが、アルバニア産、マケドニア産、ブルガリア産などバルカン半島あたりが主流。
比較的この3カ国は御近所であるし、ネズの木がたくさん自生しているのだろうと推測できる。伝統的なジュニパーベリーを発酵させて飲むドリンクもあり、ジュニパーベリーを浸漬させる酒類も存在する。ジュニパーベリーが文化に根付いているのだ。
ならば、さっそくジュニパーベリー農家を探してみようと方々に聞いてまわると、いわゆる僕らが想像するような計画農場は存在しない。
田舎の山々に長く自生しているものを近隣の人が集め、中央に持ちより、それを買い付ける人が来る。
知り合いのアルバニア人のバーテンダーに、「日本のジンは、アルバニア産を使うことがあるんだよ」と伝えたところ、「なんてこった。アルバニアにそんなにジュニパーベリーがあったのか!」という回答。
これは少ない人数のヒアリングであまり定かではないが、ジュニパーベリーに関しては、まだ生産者と消費者の繋がりが気薄だと感じる。
話を日本に戻すと、先に書いたように日本に輸入されているジュニパーベリーはアルバニア産、マケドニア産、ブルガリア産などが多い。
日本に自生するネズの木
日本でも種類は若干異なるが、いわゆるネズの木はたくさん自生している。
北海道に多く自生するミヤマビャクシンにもネズの実はあるし、例えば滋賀にある鶏冠山は花崗岩に覆われた山々により多くのネズの木が自生して実っている。
国産のジュニパーベリーはたくさんある。地権者の問題があるが、そこをクリアすれば面白いことができると思う。
また、私の知っている苗木屋でもこのクラフトジンブームを受け、いわゆるセイヨウネズの木を挿し木で量産している所がある。いまは育成中だが、話を聞く限り、2022年には本格的に販売開始され、欲しい皆様のお手元にも届くであろう。
かくいう私は6年前からセイヨウネズの木を育てている。
一番大きいのは直立すると3〜4メートルまで成長し、毎年ジュニパーベリーが多く実るようになるまで成木した。
今は挿し木で増やすことに挑戦している。 私はジュニパーベリー農家になるつもりはないが、そのような者が国内に出現したら日本のクラフトジンも大きく変わることだろう。